人的資本とは、従業員が持つスキル、知識、ノウハウ、資源などの能力を資本として捉える考え方です。これは、個々の人材が持つ能力やスキルが企業の価値を高めるという視点から来ています。人的資本と似た言葉に「人的資源」がありますが、人的資源は人の活動に役立つ個人の能力を意味するため、企業の活動に役立つ個人の能力を指す「人体資本」とは異なります。
人的資本が注目される理由
人的資本が注目される背景には、「人材の多様性」「ESG投資への興味関心」「アメリカにおける人的資本開示の義務化」の3つがあります。企業のグローバル化や働き方改革、女性の社会進出に伴い、人材の多様性が加速しています。また、ESG投資とは、環境や社会、ガバナンスに配慮した企業への投資を意味します。人的資本への投資は、ESG投資のうち社会(Social)に該当することから、ESG投資への関心が人的資本への注目に繋がっています。
人的資本開示とISO 30414
人的資本における情報開示ガイドラインである「ISO 30414」も注目されています。「ISO 30414」とは、国際標準化機構(ISO)が制定するマネジメントシステム規格のことで、「社内外に対する人的資本の情報開示のガイドライン」を意味します。このガイドラインに則って人的資本の情報開示を行うことで、世界中のどの国の企業であっても同じように人的資本状況を把握することが可能になります。
人的資本を高める方法
人的資本を高めるためには、「戦略人事の推進」「人材育成の取り組み」「HRテクノロジーの活用」の3つの方法があります。戦略人事とは、経営戦略の実現にあたり、人材という資源をどのように活用するのかを考えていくことです。また、人材育成の取り組みは、人的資本への投資とも言い換えられます。従業員の能力の向上やスキルの習得等へ積極的に投資することで、人的資本をさらに高めることができます。さらに、HRテクノロジーとは、人事分野をサポートするテクノロジーの総称で、これを活用することで人的資本をより効率的に高めることが可能です。
人的資本経営に取り組むためのヒント
人的資本経営に取り組むためには、人的資本の必要性や、人的資本のガイドラインである「ISO 30414」への対応、HRテクノロジーの活用、人的資本経営への企業の取り組み事例、そして、企業価値を高める要素の一つでもある従業員エンゲージメントについて理解することが重要です。
まとめ
人的資本は、企業の競争力を高め、持続的な成長を支える重要な要素です。企業は、人的資本の価値を理解し、その最大化に向けた取り組みを進めることが求められています。